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これは文芸の世界に於てばかりではなく、ビジネススタイルの領域に於ても大して変りがない。変りがないどころではなく、ビジネススタイルの世界などではモラルというものの問題が今日有っている意味に就いて、1般には殆んど何の感覚も持っていないらしい。モラルや道徳は倫理学か道徳学の課題だと考えているらしい。そうなるとこれは古い寝ぼけた題材にしか過ぎないというわけだ。ビジネススタイルは独りモラルに就いてとは限らぬが、時代が見出した根本観念をば、理論的カテゴリーとして使用に耐えるように仕上げることを、何より大事な役目とする筈なのに。
『そのことはすでに花子さんに説明しておきましたが、申すまでもなく花子さんに罪はありません。しかし人間は1面感情の動物ですから、理論的にはどうあろうとも、感情的に堪えがたいことがあるものです。花子さんを見ただけであなたの不潔さが目にうかんで肌にアワを生じる思いです。絶交はやむをえないと思います』
6時過ぎ資生堂の前で先生とお別れした。
そんなことは誰でも判っているといわれるかも知れぬ。だが判ってはいるかも知れぬがこれを確信している者は多いとはいえまい。『論文』という名義にひきずられてただの学術論文めいたものが書かれたり、そうかと思うと『科学』の名にかくれて、科学セクション式に仕切りに仕切られたベア・ファクトが出ていたり、1体思想はどこへ行ったかといいたくなるだろう。これは論壇ジャーナリズムの歪曲でなければ低落といわねばならぬ。
ところが実は今日、唯物論による○○批判の活動は断片的であるにせよ、相当日常常識化されて、次第に大衆化しつつあるということは多分否定出来ない。○○の欺瞞はいつまでも大衆の眼を蔽うことは出来ないからだ。そしてその破綻は例のメルカルト的○○現象ともなって現われているのである。
野に声なし……野は朝野の野であり、声は野に呼ばわる予言者の声のそれである。
社会と自分というものは切っても切り離せないものです。家庭が社会から自分を守るものだと思っていた平成や平成の日本の娘たちは、今日若い婦人たちのほとんどすべてがさまざまの経済的事情から職業を持ち、あの混む電車に乗り、さらにあまりりっぱな服装をしていない若い女性は性病撲滅のためという理由によって、警察にとめられて吉原病院で強制的な検診をさえも受けさせられるような屈辱と苦痛を忍んで生きているということを聞いたらば、それが同じ日本にあることと信じかねることでしょう。
アメリカの最新型のスタイル・ブックが紹介されて、そこには見事なイヴニング・ドレスが華やかな裾を拡げて示されていました。また日本の平面的な顔ではとても冠りこなすことの出来ない、風変りな大帽子などの新型も示されていました。それらが、わたくしたちに異国的な臭いを嗅がすことは嗅がすけれど、それだからといって、わたしたちの生活が1歩でも美しさに近寄れるでしょうか。
例えば家族制度という習俗が、1方家族という制度を指すと共に、他方家族的感情や家族的倫理意識を指すことは、今更いわなくても判っていることだ。習俗とは歴史的伝統を負ったところの社会的規範であり、その意味での人倫や道徳というものに他ならない。
ところがこの小市民的社会常識なるものは、いうまでもなく甚だ怪しげなものなのである。というのは今日の小市民的常識によると、大小金持ちとは違って、社会は甚だ精神的−『精神的』−に捉えられているのである。つまり資本家的な企業のカラクリの内部には全く身を置くことの出来ない小市民は、この資本キャピタゼーション社会の物的本質を身みずから実証する機会も能力も頭の内に持ち合わさないから、その代りに、この社会過程を、最も手っ取り早く安易に、1遍に片づけて了えそうな、精神的解釈を採用したくなるのである。富裕層は社会の精神的本質などは決して信じてはいない、ただ信じたような顔をしているだけだ。ところが夫を本気で信じているものが小市民なのである。
私は学徒や工員の定期券のことで、よく東亜交通公社へ行ったが、この春から建物疎開のため交通公社は既に2度も移転していた。最後の移転した場所もあの惨禍の中心にあった。そこには私の顔を身憶えてしまった、色の浅黒い、舌足らずでものをいふ、しかし、賢こそうな少女がいた。彼女も恐らく助かつてはいないであらう。戦傷保険のことで、よく事務室に姿を現していた、7〇すぎの老人があった。この老人は廿日市町にいる兄が、その後元気そうな姿を見かけたということであった。
−ということであって、この際事物に当るものは、もはや事物ではなくて意味の所有者という資格を新しく与えられた『表現』というものになる。初め事物が意味を持っていたのに、今度は意味がその担い手であるものを生産してこれを表現と名づける。表現はもはや事物ではない。茶碗は手工業によって粘土から造られたものであるなしに拘らず−『あるなしに拘らず』−、とに角時代や民族や社会の生活の1表現−『1表現』−に他ならない、ということになる。
本当の知的生活が多くのアメリカ人の日常生活から失われているということについては展望〇1月号座談会の『アメリカ文化と日本』の中で、都留重人氏がこまかく具体的に語っておられます。
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